SG-1000II in Land Stalker ~ SEGAハード改造記(5)

SG-1000II in Land Stalker







初めに

「コレは何だ?」と首を傾げる方も多いと思います。
タイトルにあるSG-1000IIとはどの様なハードかと言うと、
SC-3000のゲーム部分のみを切り出したのがSG-1000。
それのマイナーアップグレード版という位置付けです。

その、SEGAが40年近く前に発売したゲーム機をメガドライブのカートリッジケースの中に収めたという代物です。
つまり、本来は「SG-1000II in Mega Drive/Genesis Cartridge Case」が正式名称になる気がしますが、気にしません。

単に収めただけじゃ面白くないので、ちょいとアレンジした部分を挙げると

・電源供給はUSB Type-C
・映像出力は大好きなS-Video
・音声出力はRCAピンプラグ(モノラル、つまり左右同じ)
・カートリッジスロットとは別にマイカードスロット搭載(カードキャッチャ不要!!)
・コントローラ端子は1Pのみ

と言った感じです。
本来備わっている電源スイッチとポーズボタンも装備させたので、
完全にメイン機として稼動出来る実力が有ります。

以下の作成記を読めば分かって頂けるかと思いますが先に言っておきますと、
これは互換機では有りません
とてもじゃないですが互換機を作る実力なんて有りません。
SG-1000IIの「ガワと基板を交換した」だけの代物と言えます。
かつて作ったS-Video回路を移植、MarkIIIからマイカードスロットを移植と、
色々とアレンジを効かせて有りますが、基本的にはSG-1000IIのパーツで構成されています。



きっかけは

SG-1000IIの前期ver.のC-Video出力、後期ver.のS-Video出力、
後期ver.のDRAM交換修理(中期ver.から移植)等をやっていて思いついた事は
「コレ要するに数個のICと入出力を繋いでるだけか…SG-1000II Miniとか作れそうだなぁ」
でした。

それ以前にMarkIIIの電解コンデンサー全交換をした時には
「カスタムチップは性能はさておき形状は1000IIの後期と同じ…DRAMが違うだけか…」
とも考えていました。

つまり、昨年末~今年の初め頃には既に構想は薄っすらと頭の中に出来始めました。
世間一般受けを狙うなら間違いなくMarkIII Mini。
(今となってはスペース的に厳しいが)FM Sound Unitも内蔵させちゃったり、
Rapid Fireも内蔵させちゃったり、夢が広がります。

しかし僕が好きなハードは1000II。
売り物じゃないので、ターゲットは僕。
ぼんやりとSG-1000II Miniを妄想し続けていました。




手頃なサイズ





特に深く考えずに購入したユニバーサル基板。
何となく1000IIのパーツを並べてみたら、良い雰囲気です。
想定される電源部、カートリッジスロット部、コントローラー端子部のスペースを余してます!

「これで妄想を実現出来そうだ!」

と、ここで

「ケースはどうする…アクリル製とかかなぁ?」

等と悩んでるうちに、ふと目に止まったのがメガドライブのカートリッジケースです。
このユニバーサル基板を試しに中に入れてみると、ほぼぴったりサイズです!

ここで「SG-1000II in Land Stalker」プロジェクトが始動しました。
だってメガドラカートリッジと言えば、ランストでしょ?



まずはひたすら

上掲の画像で分かる様に、当初は中期版で作る予定でした。
何故なら、後期版に搭載されているVideo/Sound統合のカスタムチップ 「315-5066」は、
1000IIの他のICのような標準的な2.54mmピッチのDIPではなく、1.778mmピッチのSDIPです。
つまり、ユニバーサル基板に載せられません。
やるとしたら、ICの足に直接ハンダ上げして熱収縮チューブ等で絶縁という手法ですが、固定等を考えると微妙です。

そんなこんなで中期版の回路図の作成です。



良く見るとコレ既に後期版だ!



図と書きましたが格好良い図面なんて書けません(笑)ので、
ICのpinから出る配線を追って何処に行ってるかを確認し書き留めるだけです。
勿論テスターも使いますが、細マッキーで基板に直接目印を書き込みながら基本的にはプリントされた配線を全て追いました。

昔のゲーム機なので単純です。
Z80、CartridgeSlot、MB74LS32、TMM2116AP-15(TMM2009-B)、MB74LS257 x2、MB81416 x2、315-5066
これしかありません。
とにかくひたすら配線を追って、後に全てハンドワイヤリングしてあげれば
ゲームが動くはずです。



みつけました

あれこれと何かのパーツを検索してたら突然現れたS-DIPという単語。
そう、315-5066の、少し短いピッチの事を何と言うかすら知らなかったんです。
早速変換基板を検索した所…






家電のケンちゃん にて販売している事が分かり、早速購入しました。
上の写真のIC、左がS-DIPの315-5066で、右がDIPのZ80(互換)です。
変換のソケットという訳ではないので少し微妙ですが、一応これで後期版の使用に目処が立ちました。

後期版ならRGB出力可能、つまりS-Videoに変換出来る!








調査していた全てを消し去り、再び最初から後期版にて調査開始です。



加工は難しい!

全ての調査を終え、まずは基板のみでひたすら配線です。






配線を有る程度終えたら、カートリッジスロットをケースに固定…の前に

「マイカードスロットも欲しいなぁ」

と考え、MarkIIIから引っこ抜きます。
カートリッジスロットとマイカードスロットの位置を決める為に、
基板のパーツの位置、配線ルート等を色々と悩み、現在の位置に決定しました。

そしてケースの加工を開始。






まだポーズボタンや電源スイッチの穴が無いバージョンですね。
当初は「別に要らないかなぁ」と考えていました。
USB Type-Cの基板が見えてるので、この時点で電源はUSBと決めていたようです。
電源ランプもMarkIIIのマイカードスロットのままなので、ケースから出てません。

そして例によって、モチベーションを上げる為の完成イメージです。






まだ配線してないので、一旦外して配線です。






なにやら短か過ぎたかな…と思いましたが、こりずにつづける を選択。
マイカードスロットも配線、棚に飾って有るSG-1000IIからRGB2S-Video回路を引っこ抜き、載せてみます。
S端子コネクター、RCAコネクターも搭載。
電源スイッチとポーズボタンも付いてますね。
コントローラーはまだですが、ROM部を繋げば動かせそうな段階です。



C1のコンデンサーが無いぞ!



そしてハマる…

コントローラー等も全て繋ぎ終え、シェイクダウンと洒落込もうか…とウキウキしていましたが、
ここから長い戦いが始まりました。
コードで言えば、バグの発生です。
(調べた限りでは) 全てキチンと再現したのに、画面がバグる、操作出来る場合と出来ない場合が有る、etc...

今までの写真と、完成写真でICが違ってる事に気付いたでしょうか?
CPUのZ80は、当初はメガドライブから引っこ抜いた本家ザイログ製を使ってました。
メインメモリーもTMM2116AP-15で、VRAMもキチンとMB81416-12でした。

しかしバグってるのでICの不具合を疑い、315-5066以外の全てのICを根気良く交換しました。
スペース確保の為にほぼ全ての配線はICの足と同じランドに入れてるので、かなり大変な作業でした。

交換してはテスト、テストで駄目なので交換…
しかし動かない…

数日悩み、IC交換や配線チェック等の試行錯誤も煮詰まった所で、何度も見たSMS Power! さんのフォーラムを改めてじっくり見ると…
315-5066のpin51はWRだ!!NCじゃない!!!
つまり、Z80のpin22(とメインメモリーとROM)に繋ぐ必要が有ります。

たった1本の配線忘れ…というか調査の時点でのミス…

ザ・キャッスルの動画をツイートした時点では、これの他に更にもう一本の配線忘れが有りましたが、
これは調査メモに載っていたので気付けました。



遂に完成






そんなこんなで、やっと完成した「SG-1000II in Land Stalker」
相変わらず加工が粗いですが、御愛嬌という事で。
当初はパスコン無しで作ってたのが丸わかりですね。
バグってたので一応入れましたが、多分無くても大丈夫じゃ…



終わりに

ここまで大規模な工作をしたのは初めてでした。
今までの工作は全て「誰かがやった事」をトレースしていただけでしたが、
今回はお手本が無かったので苦労の連続でした。
相変わらず電子回路/電子工作の基本は修めてませんが、それでもこんな事が出来ます。

何故MarkIIIではなくSG-1000IIなのか。
これは、かつてemulatorを弄っていた事が本当の要因でしょう。
MarkIIIのemulatorを弄っていた時に、ふと全機種ソフトに思いを馳せ、
Cで書かれたTMS9918のエミュレーションコードをJava(Doja)に移植した事が有ります。
その後、原型を留めない程の最適化を施しました。
SN76489のコードも、ホワイトノイズは最後まで分かりませんでしたが矩形波3音の周波数を演算して
別の方が書いたiアプリ上で音を鳴らせるコードに渡して、鳴らせる事に成功。
(これはMarkIIIの話ですが、全機種も同じです。)

メインメモリー部分もMarkIIIとはまるで違ったので自分で書きました。
MarkIIIと平行してZ80のコードもガンガンに書き換えてたので、
SC-3000/SG-1000(II)のコードは、かなりの部分で「自分でやった」感が有ったのです。
無論、データシートを読んで書いたりする事が、本当の意味で自分でやった事になるんでしょうが、
まぁあそこまでやれば自分でやったと言って良いのでは…くらい弄り倒しました。

そんなこんなでSG-1000IIに対する思い入れが強く、
「ソフトを書いたんだからハードも作り変えないとね」
といった、ソフト・ハード両面での攻略に挑戦してみました。

途中何度も挫折しかけましたが、何とか完成してほっとしています。











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